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Luby Sparks - Trend & Chaos Interview

Luby Sparks: 日本のサウンドじゃない独特な日本のドリーム・ポップ バンド

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Luby Sparks(ルビー スパークス)は、並大抵の日本のロックバンドではない。レイヤーされた哀愁を帯びたサウンドは90年代後半のシューゲイザーを思わせるが、彼らは独自のサウンドを開拓した。全曲を英語で歌うのは、日本の若いバンドにとって安全なアプローチではないが、挑戦的に独自の道を行く。

Dennis Martin:インタビューを受けてくれて、ありがとう。ぼくは日本をツアー中、広島の小さなロックバーでLUBY SPARKS の音楽を初めて耳にしました。スムーズでドリーミーなヴォーカルと耳に残るギターフックの曲を聞いて、これは誰だと、iPhoneのSiriに聞いてみた。
日本のバンドだったことに驚きました。

自己紹介してください。バンドはどうやってスタートしたのですか。

Natsuki: Natsuki (Ba/Vo/Composer)、Erika (Vo)、Sunao (Gt)、Tamio (Gt)、Shin (Dr)の20〜23歳の5人からなるバンドです。

2016年3月ごろに僕が自分の楽曲をやりたいと思い、それぞれメンバーを大学のサークルや、知り合いなどから紹介してもらってメンバーを集め結成しました。

男女ツインボーカルでギターは2本、90年代イギリスの音楽から影響を受けたようなインディー・ロックを英詞でやりたいと思い、メンバーのルックスやファッション、見え方にもこだわっています。

ギターのTamioはブラジルのハーフで、Erikaはイギリスのハーフです。一瞬どこの国のバンドかわからない、そんなバンドをここ日本で組めたらなと思いました。

最初は、僕とSunao、Shinが大学のブラックミュージック専門のサークルで出会いました。そこで古典ファンクやR&Bをやらず目立ちたかった僕はBlood Orangeをサークル内のバンドでコピーしたりしていて、SunaoとSlowdiveの話で盛り上がり意気投合。

遊びでSlowdiveやMBVなどのコピーをしてスタジオに入っていたのが始まりです。徐々に自分の曲も作ってみて、ライブをやりだす前にオリジナルを2曲レコーディングし、関西のカセットレーベルに送りました。

気に入ってくれたオーナーによってすぐにリリースが決まり、いきなりアメリカのThe Bilinda Butchersというドリーム・ポップバンドと台湾のManic Sheep、日本のDYGLというラインナップのライブに前座として出ることになってしまい、いそいでTamioを加入してもらいました。彼のギターの音色も聞かなかったけど趣味が合うし、なにより見た目がカッコよかった(笑)。 

その後、イギリスでフェスティバルに出演、現地でライブとレコーディングをしたりして、1stアルバムリリース後に前任ボーカルのEmilyが脱退。

そしてErikaが加入しました。彼女も歌声がピッタリはまったのもありますが、なによりその世界観が好きになりました。

これまでにアルバムを一枚、EPを一枚リリースしており、The Vaccines、Yuck、The Pains of Being Pure at Heartなど、数多くの海外アーティストの来日公演のフロントアクトも務めてきました。

Dennis: ぼくは長年、日本でレコーディングやツアーに参加してきましたが、Luby Sparksのようなサウンドの日本のバンドはあまり耳にしたことがありません。日本のポップやロックミュージックというより、英国ポップに影響を受けたように聞こえるのですが、あなたが影響を受けたのはなんでしょう?

Natsuki: まさしくその通りで、主に英国のロックなどです。1stアルバムの時はプロデューサーでもあるYuck、The Jesus and Mary Chain、My Bloody Valentine、Ride、Smashing Pumpkins、Beach Fossils、Exlovers、The Smiths、Suedeなど。

そして最新作のEPでは大好きなレーベルである4ADのCocteau Twins、Lush、Pale Saintsや、The Cure、Curve、などから影響を受けました。

影響を受けたバンドのほとんどが英国のものです。やはりアメリカのバンドよりもイギリスのバンドの方がどことなく曇りや影があるように感じるから好きですね。きっと同じジャンルを両国のバンドがそれぞれやっても絶対にイギリスの方が暗くなる。日本で言えばSuperCar (スーパーカーか)らは影響を受けました。日本の音楽では一番好きですね。

主に80年代〜90年代の音楽を昇華することを目指しています。親からはTalking Heads、XTC、New Order、The Police、Sadeなどを教わりました。こういったニューウェーヴからもアイデアを日々模索しています。

Dennis: 典型的な日本のサウンドと違うので、日本でファンベースを築いていくのは大変なのではと想像できるのですが、問題はないようですね。あなたの音楽スタイルを日本で演奏するにあたり、チャレンジだと感じていることはどんなことですか。

Natsuki: 僕も始めた時は、ここまでこのバンドが続くとも、お客さんがたくさん来てくれるとも想像していませんでした。

でもバンドを進めていくうちに、今の日本に、いや2000年代以降の日本に、僕らのような音で英語詞で活躍できていたバンドがほとんどいないんだと気づき、逆にチャンスかもとも思いました。

一つのジャンルが流行るとすぐに同じようなバンドがたくさん出てきてつまらないシーンが出来上がりやすい日本。流行り廃りも激しいし、浅い音楽が好まれる。

そんな中で僕らのような音を鳴らすこと自体、ある意味チャレンジかもしれないですが、徐々にファンベースも出来上がって、少しずつ確信に変わってきています。
今の若い子たち、自分の大学の周りにいたような子たちは邦楽ロックしか聴かない、JPopしか聴かない、洋楽ポップスしか聴かないとか偏っていて、僕らのようなジャンルが好きな人はほんの一部。

でも、そういった邦楽ロックしか聴かないような子達が意外と僕らの音楽を好きになってくれたりしている。彼らにとっては90年代シューゲイズのような音楽など聞いたことないから、きっと新鮮で新しく聞こえるのかもしれない。

だから僕たちを知るのをきっかけに、どんどん僕らのルーツとかも探って音楽の趣向のはばを広げる手助けになれたらいいなと思っています。

Dennis: Luby Sparksの音楽は、シューゲイザーかドリームポップ バンドのようだとも言われているようです。個人的には、このようなレーベル付けは、人々が簡単に理解できるようにバンドを小さな箱に詰めるようなものだと思うのですが、あなたは自分の音楽をどのように説明しますか。

Natsuki: たしかに僕たちの音楽はその部分部分を切り取ると、シューゲイザーなどの要素が強いところもあります。

でもシューゲイザーと呼ばれるのは正直あまり好んでいなくて、実際に影響を受けているアーティスト達も一概にシューゲイザーではなく、ギターポップや、グランジ、オルタナにニューウェーヴ。一つのジャンルではなく、一つの軸を持ち、The CureやRadioheadのようにいろんな要素を行き来できるバンドが理想なので、最近は自分たちのジャンルは一応ドリーム・ポップとしています。

僕の考えでは、”ドリーム・ポップ”という箱は、小さいようで意外と大きくて夢見心地なポップス、だとおもっています。そこには時に普通のポップシンガーの楽曲が入っていても、ドリーミーなR&Bが入っていても、ポスト・パンクが入っていてもいいと思う。
一概にジャンルで自分たちの音楽を決め付けたくはないけれど、ドリーム・ポップという箱にはリスナーが判断する上で自分たちもその箱に入っていてもいいかなと思っています。

Dennis: 全曲、歌詞を英語にしている日本のバンドは多くありません。なぜ日本語でなく、英語で書くことにしたのですか。

Natsuki: このバンドの曲を作り出した時に、日本語詞という考えは初めっから一ミリもなく、自然と英語で歌詞を書いていました。
これは僕が幼い頃から家では洋楽しかかかっていなくて、僕自身、成長とともに聴いてきた音楽に日本語の音楽やバンドがほとんどなかったからかもしれません。両親はそれぞれニューウェーヴやアシッドジャズなどが好きで、音楽や映画、いろんな影響を受けました。そのせいで自分の耳にとって聴きやすく馴染みがあるのは日本語詞ではなく英語詞だったんです。

また、僕らがやっているジャンルにしても、英語の発音の方がメロディーが綺麗に聞こえると思いました。世界的に共通言語である英語を用いることで、日本以外でも通用する音楽をやりたい、という思いも初めからありました。後々はアジア、アメリカやヨーロッパなどでも活動していきたい。

Dennis: 歌詞を英語にすることで、日本のファンたちにどのような影響を及ぼしているるのでしょう。彼らは、実は日本語で歌って欲しいと願っているのではないですか。

Natsuki: 正直たまにファンの方や関係者からも「日本語では歌わないの?」と聞かれたり、「日本語の曲も聴きたい」と言われたりすることがあります。

一番ひどかったのはメジャー・レーベルに話を聞きに言った時に、「一緒にやりたいけど、ぜひ日本語の曲も数曲書いて欲しい」と言われたこと。きっぱりと断りましたね。

今のうちにはっきり言っておくと、僕らは今後も一切日本語の曲をやるつもりはありません。

僕は歌詞の内容にそこまで重きを置いていません、それは先述したとおり洋楽ばかり聴いて育ち、歌詞の内容よりメロディーの美しさや単語の語感の良さを優先的に聴いていたからかもしれない。

でも、実際に好きなバンドの歌詞とかをみてみると、内容としてはとてもシンプルなものが多い。僕もそんなメロディーや聞こえ方を軸にした歌詞作りをしてます。全曲英語で今の日本の音楽シーンで大きくなれてるバンドって全くいない。

仲良くしてもらっている先輩でもあるDYGLはすごいと思う。日本人はやけに歌詞を気にする傾向にあって、僕はそれがあまり理解できない。もちろん僕も自分の歌詞の内容にもこだわっているが、そこで共感とかを求めたりするのはなんか違うなと持ってしまう。どちらかというと映画の一場面を切り取ったような歌詞を心がけています。

Luby Sparks - Trend & Chaos Interview

Dennis: ニューEP “(I’m) Lost In Sadness”を気に入っています。最初から最後まで自然に流れていくフローのあるEPやアルバムが僕は好きなのですが、この“(I’m) Lost In Sadness”には、じつに美しい流れがあります。

“Look on Down from the Bridge”のフェイドアウトは、完璧な終わり方。このEPのレコーディングはどんな感じだったのですか。

Natsuki: このEPは1stに引き続きイギリスのバンドYuckの中心人物であり、元Cajun Dance PartyのMax Bloomにプロデュースしてもらいました。Yuckは僕たち全員のフェイバリット・バンドであり、僕にとってはこのバンドを組んだきっかけであり、昔からの憧れのバンドの一つでした。

こんな曲が作りたいと思って後に始めたのが、Luby Sparksです。このバンドを始めたての時に縁があり、なんとYuckの2017年の広島公演の前座をつとめさせてもらいました。そこで彼らと一気に仲良くなり、その期間は確か1週間ぐらい毎日、彼らと遊んでた。

Maxに音源を聴いてもらったら僕がミックスしてあげようか、と言ってくれて。さらにアルバムのときもプロデュースのオファーを快く受けてくれて、彼のロンドンの自宅でレコーディングを行いました。

そしてこのEPは今度はMaxに日本に来てもらい、東京にある知り合いのプライベートスタジオを使い、10日間かけてレコーディングしました。

僕たちはレコーディングにおそらくかなり時間をかける方だと思います。このEPではたった4曲なのに10日間かけてレコーディングし、1、2日目でドラムとベースをレコーディング、最終日に歌やパーカッション、キーボード、そしてその他7日間くらいはギターの多重録音の時間でした。

とにかくギターで織りなす“音の壁”、ギターのアンサンブルや音色作りを大切に作り上げました。

このEPで一番最初に出来上がったのが、3曲目の”(I’m) Lost in Sadness”で、Radioheadの”Paranoid Android”のような壮大な曲を構想していたら7分越えの大曲になりました。

展開を多く孕んだこの曲は、他にもLush、Smashing Pumpkins、Chapterhouse、中期スーパーカーなど様々な曲から影響を受けました。この曲を中心として4曲全体の流れ、フローを考えてあとの3曲を組み立てました。

オープニング曲”Perfect”は1stの流れも組み込んだポップな楽曲に仕上げました。前作を好きな人が置いてかれないように(笑) 

2曲目”Cherry Red Dress”は僕自身も特に気に入っている曲で、Cocteau Twinsからの影響を全面に出した楽曲です。Erikaのハーモニーを主旋律に思いっきりぶつけて浮遊感を生み、初のドラムマシーンの起用、パーカッションを何種類もレコーディングしループさせることで機械的なビートに生の演奏が乗るような音像を目指しました。

最後の曲”Look on Down from The Bridge”はMazzy Starのカヴァーで、Erikaのアイディアです。

Slowdiveがライブの最後にいつもSyd Barretteの”Golde Hair”を爆音で演奏するのをみて、それを意識しました。

カヴァーをするならアレンジの変化が大胆に見えるフォーキーな曲がいいと思い、この曲に決まりました。

曲の始まりはErikaのハーモニーをたくさん重ねて、1stではあまり使用しなかったシンセサイザーやピアノも大胆に何重にも重ねました。

フェードアウトはまだもう少し聴いていたい、と思うようなポイントであえてフェードアウトしています。これはもう一周EPを初めから再生したくなるような作りにしたくて行いました。

1stのときも曲全体の流れ、フローはこだわっていて、曲間がスムースに行くように、緩急がついて飽きないように、もう一度冒頭の曲につながるように、意識して作っています。

Dennis: Luby Sparksの音楽はブリティッシュ・ポップの影響があるものの、アメリカ人に聴いてもらったらバンドはきっと受けるだろうと、ぼくは思います。特に、NYブルックリンで! アメリカツアーを将来、考えていますか。

Natsuki: イギリスでは2回だけライブをしたことがあり、どちらもお客さんの反応が日本と全く違って、僕らのような誰しもがノリやすいというわけではジャンルでも、歓声がずっと湧いていてびっくりしました。

演奏していて気持ちよかったです。日本でライブするときもたまにアメリカなど外国人のお客さんが来てくれることがあり、そういった反応の良いお客さんがいると、やっぱりやりやすい。日本人は基本的に静かにライブを聴く人が多いと思うので。

NYブルックリンはまさしく僕やギターのSunaoが大好きなThe Drumsや、Beach FossilsWild Nothingを率いたCaptured Tracks、一度日本で共演したThe Pains of Being Pure at Heartなど、00年代後半の僕たちが影響を受けた多くのインディー・ロックバンドが活動している地で、昔からロンドンと同じく強い憧れがあります。

もちろんツアーもしてみたいし、「Yuckが2ndアルバムをNYで現地の有名プロデューサーをつけてレコーディングした経験は、辛かったけれど学ぶことがあった」という話をMaxから聞いて以来、次はNYでのレコーディングに挑戦してみたい、という気持ちもあります。

そして、シアトルのKEXPに出演するのは、僕たちの結成当時からの夢であり目標です。

Dennis:インタビューに応じてくれて、本当にありがとう。いろいろ知れて、良かったです。Luby Sparksのさらなる飛躍を楽しみにしています!

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Dennis Martin
dennis@trendandchaos.com

デニス・マーチンはミュージックプロデューサー / マネージャーで「トレンド&カオス」創立者。 Follow Instagram & Twitter.