このところ、SpotifyのCEOのダニエル・エク(Daniel Ek)のコメントが、物議を醸している。ストリーミング音楽で生計を立てられないミュージシャンたちが存在する理由についての彼の考えだ。

多くのミュージシャンたちが彼のコメントに腹を立ててツイートなどで投稿するのを目にした。ミュージシャンたちがなぜ彼のコメントに意義申すのか、その理由を理解してあげることは重要だ。

 MusicAlly, のインタビューで、エクは語った。

「今日、私たちの市場には、実際に何百万人ものアーティストが存在します。
その中で話題に取り上げられやすいのは、不満を持つ人たち。
でも（Spotifyの）全体を見ても、「ストリーミングから得てる収入に大満足！」と言うアーティストに、私は会ったこともありません」（どうもカー・シート・ヘッドレストのことを知らないようだ）

彼は語り続ける。

「プライベートでは何度もやってることだろうが、パブリックでそれをやってもインセンティブはない。だがデータを見れば、アーティストの多くがストリーミングの収入だけで生活できるようになっているのは紛れもない事実です」

「事実に混じり、どうも間違った解釈もされているようです。

明らかに、前はうまくいっていたアーティストたちでも、将来的にはうまくいかないというケースも出てくることでしょう。3〜4年ごとに音楽を録音していれば十分だ、と考えていたらです。

うまくいってる今日のアーチストたちが認識しているのは、常にファンたちとつながっていく継続的なエンゲージメントを生み出すことの重要さ。それは作品に力を入れること、アルバムにまつわるストーリーを伝えること、ファンとの継続的な対話を保つこと」

そして、彼はしめくくった。

「ストリーミングでうまくいっていないのは、昔のやり方で曲をリリースしたいと考えている人たちだと思います」

ダニエル・エクは、ミュージシャンたちに価値あるアドバイスをしていると思ったかもしれない。ところが代わりに出てきたのは、クリエイターたちと大企業の間に存在する見解の相違の断言だった。

彼のインタビューを読んだ途端、私の頭に浮かんだ絵は、昇給を要求しに上司のオフィスに出向いたスウェットショップの工場労働者。上司は彼に言う。「君の給料を上げるのは無理だが、もっと稼ぎたいなら、もっと多くの時間、働けばいいんだよ」

多くの人々が同じようなシナリオを頭に描いたと思う。基本的に彼が言っているのはそういうことなのだからー。”もっと早く手を動かし裁縫して、私の稼ぎを増やしてくれ、そしたら多分、君にも昇給があるよ。”

Spotifyの株はこの数か月、Stitcherを買収してメガポッドキャスト取引を発表したため、激しい上昇の渦にある。

ダニエル・エクは、上機嫌な投資家から大きな見返り報酬を得る一方、ミュージシャンたちには、それも多くが独立系アーティストである彼らに、君たちは十分ハードに努力していない、と伝えているようだ。それは信じられないほど鈍感で、見当違いである。 

確かに、このプラットフォームで、より多くのコンテンツをリリースするアーティストたちが成功を得ている。

それと同じく事実なのは、Spotifyの株主たちが享受する潤いを、そのプラットフォームの偉大な急成長と構築に力をかしたクリエーターたちの大抵に、公平に配給されていないということだ。

では、私たちはここからどこへ向かえばいいのか？
これはダニエル・エク、Spotify、ミュージシャン、ポッドキャスター、そして消費者にとっても、良いレッスンになったのではないか。

エクに関しては、彼のコメントへの反動を目覚めにしてもらいたい。曲というものは、販売商品のコストと製造商品のコストの比率をあげるために、スウェットショップで迅速に作られる大量生産のスウェットではない、ということを理解しはじめる機会にしてほしい。

クリエイターにとってキーとなるのは、数が少なくても実際に音を聴いてサポートしてくれる忠実で熱心なファン層たち。Bandcampでアルバムを$10で購入したり、グッズやショーのチケットを購入してくれるファンたちは、あなたの曲をプレイリストの中の一つとして再生する1000人のSpotifyリスナーよりはるかに価値がある。

ああ、リスナーたちとしっかりした直接的なつながりを持つことは非常に重要であり、次のフルアルバムまでのサイクルのギャップを最小限に抑えようとする努力も役立つ。
だが、消費者たちを教育し、フェアな市場の運営方法を企業に指示することは、ミュージシャンの仕事ではないのだ。

ストリーミングにはふさわしい場所がある。音楽の消費者として、私はそれを定期的に使用している。でも同時に、Kickstarter、Bandcamp、Patreonのアーティストたちも、できるだけサポートする。フルレングスのアルバムの曲作り、レコーディング、プロデュースに関わる作業がどれほど大変かが分かるから、それらの価値を認めたいと願うのだ。

技術革新は私たちにいくつかの素晴らしいツールを与えてくれた。
初めてiPodを手にしたときのことを思い出す。ビートルズの全アルバムが自分のポケットの中に入っていることに、私はただただ驚かされたものだ。
だが、私たちはみなそれに甘んじてしまい、少し甘やかされてしまった。
もし私たちがアートをあたり前のように思って利用し続けたら、多くの喜びを私たちに与えてくれる豊かな音楽コミュニティを抑制してしまうことになる。特に、私たちが最も必要とするこの時代に。

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